よし、太陽になろう!~りょうじ君のインドヨガ留学体験談~

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ひょんな偶然から7年ぶりにプリーの土を踏み、未知の世界であるヨガの道へ、適当Tシャツを着て挑んだ旅人・亮二君。2016年8月開講「インドヨガ留学」コースの卒業生です。プリーでのヨガの日々は、“母ちゃんがフィットネスでしているヨガ”とは違う、斜め上の世界が広がっていました。その中で、旅の目的地とは別の、彼の大きな目的地を見つけたようです。

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きっかけは「ノリ」と言っても過言ではない。
インドの電車の荷台でお尻の痛みの限界に達した僕は、隣のインド人に尋ねた。

「ここはどこ?そしてバンガロールまではあとどのくらいかかるの?」

隣のインド人は身体をよじらせてこちらを向き答える。

「バンガロールまではあと20時間くらいだ」

僕は戦慄した。

この荷台を立つとすぐさま他の乗客にスペースを取られてしまうので、尿意を催したら空のペットボトルで用を足す。

同じ車両で座っている乗客は20%にも満たないと思う。座れるだけでラッキーなのだ。

ラッキーなのだが、コレがあと20時間だと…?

心が折れかかっていた。
そんな時インド人が言った一言に耳を疑う。

「次はブバネーシュワルだな」

「ブバ…!!?え?なに?」

「次の駅はブバネーシュワルだ!」

「ブブブブバネーシュワル!!?」

ブバネーシュワルは知っている、
7年前インドに訪れた際、3週間ほど滞在した街プリーよりバスで約1時間、インド、オリッサ州の州都である。

プリーいいところなのは覚えている。
心は決まった。

同行していたワシントン(インドマニプール州出身の青年)をバンガロールまで送る予定だった僕は、向かいに座るワシントンに一言。

「ワシントン、俺はここで降りる!」

40時間の電車移動を終え、僕はひょんなことからプリーに行くことになった。

インドの子供たちとジャンケン列車

インドの子供たちとジャンケン列車

 

1.きっかけ

伝説の日本人宿、サンタナロッジについて、7年前とあまり変わってないことに安心した、7年前と同じように「田舎の漁師町×日本人宿」という安心感の中でダラけきった生活をしていた僕にその話は突然舞い込んだ。

「亮二がヨガをやったらきっと変わると思うんだ、しかもどう変わるのかすごく気になる、やってみなよ」

と言うのは7年前に僕が相撲で負けて坊主にされ、今回7年振りに相撲を取って再び負けて、7年振りに僕を再び坊主頭にしたS氏であった。

インド、プリーのビーチで本気相撲

S氏と7年越しの本気相撲

 

はじめは嫌だと言っていた気がする、「ヨガなんてやったって変わらないっすよ!」と言っていたのは覚えているが、なぜ始めることになったのかはよく覚えていない、まぁきっと、話上手のS氏にまんまと丸め込まれたのだろう。そこからトントンと話は進み僕のTTC200の参加が決定した。

ヨガの第一印象は「長めにやるストレッチ」程度であったが、男としてはこれといって体が硬い方ではないし、まぁ問題ないでしょうと思っていた。

そこから怒涛の45日が始まるなんてことは全く想像もできずに…

初めて一緒にヨガをやるメンバーと顔を合わせた際、ある程度想像していたものの身なりの綺麗さに驚いた。

僕は持っている最大限のオシャレとしてネパールで買った大麻のパンツにタイで買った「適当」とプリントされたティーシャツを着てメンバーと顔を合わせたのだが、それでも「マズイ」と思った。もしかしたら、住む世界が違うのではないか、ヨガはヨガでもウチの母ちゃんがやっているルネッサンス(日本のフィットネスクラブ)とは違って、すごいポーズとかしてしまう人達なのではないか、そう思った。そして正直「この人達と45日も一緒なのか…」と言うところに不安を覚えた。

ヨガ仲間と初顔合わせ

適当Tシャツが似合う似合う

 

2.START

初日から早速アーサナプラクティカルが始まった。
その時、僕は太陽礼拝(スーリヤノモシカール、サンサルテーション)というのを初めてやった。
最初の感想は「なにこれ、きっつ!」である。
別に体力に自信がないわけでもなかった。
しかし、当初抱いていた「ただのストレッチだろ」という印象を吹き飛ばすには十分であった。
僕はヨガの印象を「ただのストレッチ」改め「ガチめなストレッチ兼まあまあキツい筋トレ」に変えた。
周りの人の体の柔らかさにも狼狽した。
ほとんどの人が前屈で当たり前のように地面に
手のひらがぴったりと付いている。
「もしかしたら、大変なところに来てしまったのかもしれない」再びそんなことを思っていた。
まもなくして、ヨガセオリーの講義が始まった。
講師の先生がなにを言っているのか僕には全然わからなかった。
アシタンガヨガとハタヨガとクンダリーニヨガがどうとか、保存食品や肉は精神衛生上良くないとか酒やタバコはテロリストの様な人種を作り出すとか、相手によって態度を変える人を信じてはいけないだとか、輪廻的な考えを持っているのにこれは宗教ではないとか、大事なチャクラポイントが7つだか8つくらいあって、それがすべて開けば悟りの境地に達するとかetc…

真面目に聞いているふりをしながら、聞いてることをメモしているふりをしながら僕は、教科書のなかに、
「どんなに立派な人が言ったことでも自分が実際に体験して思ったものに勝るものはない」とか、
「ヨガの考え方はこれまでの27年間の人生を全否定されている気がする」とか、
「人に与えられた答えの中で生きていくくらいなら、自分で見つけた答えの中で死にたい」とか、
「逆転ホームランを打ちてぇ」とか、
それなりにパンクなことやわけのわからないことを書いていた。

それほどに、自分にとって新しい事が学べるチャンスだという事に気づけていなかった。

アーサナ(シャチホコのポーズ)

シャチホコのポーズ

 

自由奔放な旅人から、ヨガを学ぶ学生となり、環境の変化に対応仕切れていなかったのかもしれない、この後すぐ、気がつけば僕は精神的に軽く自滅していく事になる。

3.転機

ヨガ生活も2週目に入り、僕は明らかに調子を崩した。
ヨガだけではない、周りとの人間関係や、決められた時間の中で動く自分、そして同じ事をする毎日に嫌気がさしてきた。

「このままじゃいけない」と思った僕はひとまず1人になる時間を増やした。
朝、海辺で朝日を拝んでからヨガホールへ行く事にしたり、ご飯も1人で食べられる環境を作りそこへ逃げ込んだ。

自分自身のチューニングをするには、1人になれる時間や1人になれる空間が必要だった。
そして、これが功を奏したのか、僕は少しずつではあるが調子を戻していった。

ある日、ある人と話す時間があった。
お互いにお酒を飲んでいたのだが、
僕はその彼と軽い口論をした。

「世の中は嘘つきだらけだ、だから人を信じるな」
「世界は破滅に向かっている」
「世の中は金で動いている、俺は金で成り立つ人間関係を抹消したい、俺が作る平和な世界に君達がついてこれるとは思えない」
「俺が人と付き合うのは金のためだ」

そうまくし立ててくる相手に、僕はキレた。

「喧嘩、売ってますよね?」
「俺は絶対にあんたみたいにはならない」
「平和?あなたが作る平和に僕は1ミリも魅力を感じない。そんなのこっちから願い下げだ」
「いじめたきゃいじめろ、そうされる前に出て行くよこんなとこ、くたばれじじい」

…そう、僕はやってしまったのだ。

帰ってからも僕の怒りは収まらなかった。
そして。怒りとともに大きな後悔の念が押し寄せてきていた。

今までにこんな思いを抱いた事は何度でもあった、悪口なんて言ったら言っただけ帰ってくるのになんでやってしまうのだ。

そう思いながら僕は眠りについた。

翌朝、日が昇る前に目が覚めた。
心のイガイガは全く取れておらず、
しばらく自分の中と闘っていた。

しばらくして朝日が昇ってきた。
太陽に向かって言ってみた。
「どうしたらよかったんだ?教えてよ太陽さん」

言った後、驚くほどスッキリしている自分に驚いた。
僕は「聞いてもらうだけでよかったんだな」と思った。
そして、ずっと毎日当たり前のように昇り、当たり前のように沈んでいく太陽を眺めていてとても羨ましく思った。
太陽はなんの見返りもなしに僕らを照らしている、感謝されようが恨まれようが自分のしたい事をしてその結果、地球上のほとんどの生物がその恩恵を受けて生活をしている。
自分がやっていた事が勝手に誰かのためになっている。こんなに素晴らしい事もないと思った。そして、太陽は誰も、いや、なにも否定しない、ただいつものようにそこにどーん!といて、すべてを受け入れている。

「どうしたらいいかな?」

僕の問いに対して、太陽さんが言った気がした。

「自分で考えろ!」

僕は「はい」と思った。

そして、僕は「太陽のようになる」と決めたのだった。

ヘナアートで太陽のシンボル

ヘナアートで太陽を

 

4.受け入れる

そうして、僕は何者も拒まず、見返りも求めず、すべてを照らす太陽を目指すこととなった。

まず、喧嘩したひとに謝り、次にヨガセオリーの講義を「自分に新しい何かを教えてくれる素材」として受け入れることにした。

驚いたのは、姿勢を変えるだけで講義がすんなり頭に入ってくることだった。
「それは確かに!」と思うことがあったり、
「そういう考え方もありだよね、でもごめん、やっぱり俺はこうだわ」と思うことがあったり。

真面目に聞き始めると、面白い要素がポンポン出てくる。
どんな話でも、斜に構えるのとまっすぐ聞いてみるのでは内容が全く違ってくる、当然の事のようだが、これがさっぱり出来ていなかった自分がいた。

サンタナホテルの屋上でヨガを教える

青空の下、子供たちにのびのびとヨガを教える

 

怒りや緊張に心を支配されると、呼吸が浅くなる。裏を返せば、安定した呼吸をすることで怒りや緊張からある程度解放される。
講義でこんな話を聞いた。

目から鱗だった。
呼吸に集中したことなんて無かった僕は、
普段息をどれだけ吸ってどれだけ吐いているのか考えた事もなかった。

呼吸が変わるのは怒りや緊張だけではない。
楽しい時、悲しい時、眠い時、朝、昼、夜、晴れの日、雨の日、風の日…
気分がすぐれない時は必ずと言っていいほど自分の呼吸は気持ち悪いものになっていた。

相変わらずわからない事もあった、
その時は、「そういう考え方も良いんじゃない?」と心に留めるだけ。

それでいいのだと思う。

5.意識しすぎると毒

ヨガを受け入れはしたものの、
勉強した事をさも何でもわかったかのように話すことには抵抗があった。

講義を受けている頃、ヨガの知識を学んではいるが、では今実際にヨガをしているという感覚はあまり無かった。

周りを意識するなと言われてもどうしても見てしまって、自分にできないポーズをしている人たちを見ると未だに悔しさを覚えたし、「心地良いところで止めろ」と言われても見栄を張り少し無理をしていた事もあった。

次のヨガコース受講生へ体験談を語る

これからコース受講の人達へ卒業生として体験談を話す亮二君

 

一緒にヨガを学んでいるメンバーやヨガ経験者と話をしている時が訪れる。
そういう人たちと話をしていると、時として、
「ヨガってこうだよね」
「ヨガ的にはこういう考え方だからそうした方がいいよ」
「そんなのはヨガじゃないよね」
こういう言葉が飛ぶことがある。
僕も言ったことは何度かあると思う。

でも、こういう話を聞いていて僕は、
「なんだか嫌だな」と思うことがあった。
何より楽しくないなと思ってしまう。

誰に強制するものでもない、
やりたきゃ勝手にやればいい。

「ヨガの考え方はこうだからこうしなさい!」
とか、そういうものではないのだと思う。

僕の中ではヨガは「する」のではなく「ある」もので、ヨガという1本の軸がそこには立っていて、それを好きな人々が寄り添う。

近付いてもいいし、離れてもいい。
強制をするものでもないし、誰かとするものでもない。
太い1つの考え方があって、自分の世界を少し広げてくれるもの。

ベースは自分で、そこにヨガを取り込む。
そのくらいがちょうどいいと思っている。

ヨガにどっぷり浸かった先に何があるのか、どっぷり浸かった事のない僕にはわからないのだが、ヨガの考え方1つにとらわれては面白くないと思っている。

いつでもヨガヨガ言っている人を見ると、時として、「それはあなたの話ではなくて、ヨガの話ですよね?」と思うことがある。

ものすごく簡単に言ってしまうと、ヨガは自分に集中するためのソースであり、最終的に徹底的に自分に集中することができればヨガなんて必要ないのだと思う事もある。

6.まとめ

誤解されてしまうといけないので書くと、
根本的に僕が学んだヨガの考え方が好きだ。
好きなのだけれど、僕とヨガは違うのも確かだ。

ヨガを学んでみた今、新しい自分への問いが増えた気がしている。
それだけでもやってみた価値はあった。
太陽になるという目標もヨガをしているうちに思い描いたものだ。

出会ってしまったからには、これからも付き合っていこうと思う。
時にぶつかり、時に慰められ、時に仲良しになる。
ヨガだって万能ではない。
僕にとって「先生」というよりは、「仲間」という感覚で接していきたい。

亮二君とヨガメンバーアラジンスタイル

ヨガメンバーとS氏と

 

TTC200というコースについても少し触れると、45日間で本当にいろいろなことがあった。
やる事は決してヨガだけではない。
人間付き合いで頭を悩ませる事もあるし、
繰り返される毎日に参ってしまう事もある。

時としてこの生活そのものがヨガなんかよりよっぽど大事なのではないか、という事を思う時もある。

奇跡的確率で一緒に学ぶ事になったメンバーだ。
出会った事が偶然だと言えばそれまでだが、
僕は本当に今回一緒になったメンバーとこのコースを受けることができて良かったと思っている。
ポジティブもネガティヴも好きも嫌いも楽しいも楽しくないも全部必要で、その時何が必要なのか、どれを選んでいるのか、すべては自分次第なんだと思う。

赤の他人だらけの環境で、如何に自分に集中するか、こんなに難しい事もなかなかない。

だからこそ、そこには出会った事のない喜びがたくさん詰まっていたのだと思う。

インドヨガ留学のすすめ

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